2017年03月14日

アメリカこぼれ話 47 大統領を2度務めた男

JN協会理事 北村 嵩 (元 JTB取締役)

「大統領を2度務めた男」

バラク・オバマ大統領は建国以来、44代目のアメリカ大統領である。
歴代の大統領でただ一人2度大統領を務めた人物がいるので、43人目の大統領となる。

その唯一大統領にカムバックを果たした人物は、第22代の大統領を一期務めた後、
二期目の選挙で破れ、その次の大統領選に再挑戦して当選。第24代大統領に返り咲いた
グローバー・クリーブランドである。クリーブランドは貧しい牧師の第五子に生まれた。

大学には進学出来なかったが、苦学の末、弁護士の資格をとり、ニューヨーク州北部
で活動していた。1881年に民主党から推薦され、バッファロー市の市長に当選した。
その後ニューヨーク州知事にも選ばれ、行政改革や反ボス政治の姿勢が評価されて、
1884年の大統領選挙に民主党の大統領候補として立候補し、当選した。

リンカーン大統領以来24年間続いた共和党政権が倒れ、久しぶりの民主党政権の誕生
である。在任中の最大の争点は関税問題であった。

クリーブランドは共和党の高関税政策は消費者に不利をもたらすとし、関税の軽減を
主張した。再選を目指して1888年の大統領選に望んだ。

一方、共和党のB・ハリソン候補は、関税引き下げはイギリス製品を有利にする
として反対した。現職有利と見られていたが投票日直前に在米イギリス公使が不用意に
“イギリス政府はクリーブランドの再選を希望する”旨の文書を出したため、
大衆の愛国心を刺激し、僅差で敗北した。しかしハリソンは、第23代大統領として
公約通り一般関税を引き上げたため、生活必需品の価格が高騰し国民の不評を買った為、
1892年の大統領選ではクリーブランドが大勝した。


この時代は、マーク・トウェインが「金ぴかの時代」と名づけ、政財界の腐敗が
激しかった。既存の共和・民主の両党に対する不満が大きく、人民党という第三政党が
結成された。この年の大統領選では西部の農民を中心に一般投票で百万票を集めて
侮れない政党に成長しつつあった。クリーブランドが2度目に大統領に就任後は、
生憎、恐慌に見舞われ、財政破綻の危機を招いた。

1894年に起こったプルマン寝台車会社の労働者のストライキで、会社側の要請を受け
連邦軍を派遣してスト鎮圧を企てた。このような反労働者性を露骨に示しことなどが
影響し、96年の大統領選では民主党の指名は得られなかった。

なお、クリーブランドは歴代大統領中、最も晩婚で(49歳)、一期目の途中で大統領
としてはただ一人ホワイト・ハウスで結婚式をあげた。





posted by JN01 at 19:02| 連載:アメリカこぼれ話