JN協会理事 北村 嵩 (元 JTB取締役)
「タバスコは何処の製品?」
今の日本で、スパゲッティーやピザの店でテーブルの上にある赤い液体が
入った小瓶、「タバスコ」を知らない人はほとんどいないであろう。
赤唐辛子と酢の混じった独特の味と香りは、食べ物の味をいっそう引き立て、
愛好する人も多い。赤い唐辛子の入ったあざやかな赤色の小瓶の上に、白い
菱形のラベルに緑の文字で「タバスコ」と書かれている。
タバスコとはメキシコ南部の川の名前である。
一見メキシコ製品のように見えるが、よくラベルを読むと「マッキルヘニー社、
メイド・イン・USA」と書かれている。実はタバスコは、アメリカ南部ルイジアナ
州産なのだ。
創始者のエドモンド・マッキルヘニーは、ニューオルリンズの銀行家でスコッ
チアイリッシュ系であった。南北戦争の最中1862年に、北軍がニューオルリン
ズ近郊まで攻め込んで来た。
マッキルヘニーは、妻の実家アヴェリー家のあるアヴェリーアイランドに避難
した。アイランドと言っても島ではない。ニューオルリンズの西、ケイジャン郡
にある岩塩が盛り上がって島のようになった土地である。
当時、塩は肉を貯蔵するために必要な貴重品であった。純粋な岩塩がドーム
状に豊富にあるアヴェリーアイランドは、北軍に侵略され、一家は更にテキサス
に逃げた。
南北戦争終了後、荒廃した故郷に帰ったマッキルヘニーは、庭に実っていた
唐辛子に塩をふりかけ、酢と麦芽汁を加え樽に漬け熟成させた。出来上がっ
た汁をオーデコロンの空き瓶に詰め、近所の人たちや友人に配ったところ
好評であった。
それで1868年に商標登録をし、商品化したのである。成功のポイントは豊富
な塩である。塩の運搬のために近くまで鉄道が敷設されていたので、これに
便乗して商品の売り上げを伸ばすことが出来た。
赤唐辛子は当初、近隣の農園で手積みしたものを使用していた。世界中に
需要が広がると周辺で収穫されたものだけでは間に合わなくなり、メキシコ、
ベネズエラ、コロンビア、ホンデュラスなどから輸入されるようになった。
現在でも昔ながらの製法を守っている。3年間は樽に漬けられ、味や色がチェッ
クされた後、酢が加えられて混合液が作られる。そして1ヶ月後に濾過されあの
小瓶に詰められて世界中に輸出されている。
我が日本が輸出先のナンバーワンである。
2016年10月28日
アメリカこぼれ話 45 タバスコは何処の製品?
posted by JN01 at 16:24| 連載:アメリカこぼれ話